私塾の思い出

 

「大学院生以上大学教員未満」の頃、長谷川宏先生の赤門塾を始め、いくつかの素敵な私塾に憧れて、故郷の福岡で私塾を開いていました(赤門塾については長谷川『おとなと子どもの知的空間づくり』を参照)。

  

 そこでの「教育」が「成功」したとは思えません。「失敗」や「挫折」も多かった。ただ、子どもたちは少なからず楽しそうではあり、私も子どもたちから学ばせてもらったのは確か。大学院の「学びからの逃走」の結果、逆に教育研究者としてのベースを与えてもらった気がします。

  

 この活動は大震災後の社会的、精神的な混乱の中で生まれました。大震災の時刻、私は大江戸線(地中深くを走る地下鉄)に乗っていました。そしてその日は「帰宅難民」。消防車は東北に出動していきました。

 その後、東京で人々の様々な「共助」の姿を見ながら、信号も消えた計画停電の夏を越えて、私の中で非常に素朴な「学び舎とは何か」という問い、私塾への憧れが強まったのでした。

 

 この小さな学びのコミュニティに集ってくれた子どもたち、そしてそれを支えた大人たちに感謝します。